左右新聞読み比べ

2018年5月9日

 

朝日新聞「米、イラン核合意離脱へ」

日経新聞「イラン核合意離脱か」

 

 2紙の一面は大きく構成が異なっている。朝日が「米、イラン核合意離脱へ」「小2殺害 線路に遺棄」「武田 6.8兆円で欧米大手買収」の三つを掲載。うち、「米、イラン核合意離脱へ」が大見出し、ほか二つは中見出しという紙面になっている。一方、日経は「中朝首脳が再会談」「日航、欧米線LCC参入」「シャイア―買収合意」「中国スマホ販売停止」「米、イラン核合意離脱か」を一面に。そのうち「中朝」「日航」を大きく取り上げ、「米、イラン核合意離脱か」に関しては小さい見出しだ。

 どうやら朝の入稿に間に合ったのは朝日のようだ。現地時間朝3時のトランプ大統領による会見が行われている。よく朝刊に間に合ったと思う。日経が確信を持てず疑問形でおわっている点から見ても、朝日の対応は早かったのだろう。9面に詳細な記事も載っており、周到さを感じる。

 

「トランプ米大統領が8日2015年に英米仏独ロ中の6カ国とイランが結んだ核合意から離脱することをフランスのマクロン大統領に伝えたと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。トランプ氏は同日午後2時(日本時間9日午前3時)に正式に発表すると表明している。イラン側の反発は必至で、合意維持を求めてきた欧州との溝も深まる可能性がある。」

 

朝日はトランプ氏の決定に批判的だ。「一方的な離脱は、米国自身が合意違反との批判を受け、国際的な信用を落としかねない。」

一方、日経は日和見的な見解を述べている。「イラン原油の取引が制限される公算は大きく、原油価格の上昇に拍車がかかる可能性がある。■欧州諸国はトランプ氏に核合意の維持を働きかけてきたが、トランプ氏は選挙公約の実現を優先させるもようだ。」経済紙らしく原油価格の変動についての言及にとどめている。

 

公立中正を是とする報道機関であるならば、日経の態度が正しいだろう。しかし、あまり事件の波及の仕方やトランプ氏の決断に至る根拠が薄い。この点において、朝日新聞の方が納得できるし、読みごたえがあった。

 

イランへの厳しい対応には「イラン対イスラエル」の構造がある。アメリカの約25%がキリスト教福音派であるが、多くがトランプ支持派であり、親イスラエルの立場。彼らの指示を取り付けることが大きな目的である、と指摘している。

 

イスラエルの米大使館をエルサレムに移すなど、福音派指示に傾き、国際情勢を刺激するトランプ氏。米朝会談が迫る中で核保有国への対応はきびしくなりそうだ。